リロイとケイティ
1、
リロイとケイティは、いつもなかよし。
子供のころから、ずっと一緒。
遊ぶのも、食べるのも、眠るのも。
2、
だけど、ケイティにはパパとママがいて、
リロイにはいない。
リロイはいつも、ちょっとだけうらやましい。
「ぼくのパパとママは、どこにいるんだろう?」
ケイティが学校に行ってしまうと、
リロイはいつも窓から外をじっと見てた。
3、
ある日リロイは、夜中にこっそり抜け出した。
ベッドですやすや眠ってるケイティを置いて、
パパとママを探しに出かけた。
4、
いつも散歩する河原や公園よりも、
もっとずっと遠くまで歩いた。
初めてひとりで歩く外。
走りたいときに走って、止まりたいときに止まった。
5、
川を渡り、丘を越え、野原を横切り、どんどん歩く。
「まるで、世界がぼくのものみたい!」
なにもかもが、自分の思いどおりになるような気分。
「きっと、パパもママも見つかるよ」
6、
リロイは歩き疲れると、公園の木陰で丸くなった。
「そういえばケイティ、心配してるかしら」
ちょっとだけ気になったけど、ひとねむり。
7、
眠っていると、誰かの声。
「おい、ここは俺さまの縄張りだ。出て行きな」
目をさましてみると、リロイの何倍も大きい牛が、
怖い顔をして立っていた。
「でも、ちょっと寝かせてくれたっていいじゃないか」
リロイは強がってみたけれど、
牛に殴られて、噛みつかれて、逃げ出した。
8、
体が痛くて、歩けなくなったリロイは、
茂みの中に隠れるように丸くなった。
さっきまで自分のものだった世界が、
とても怖いところのように感じた。
「ケイティのベッドで寝たいよ……」
涙がひとつ、ほろりと落ちた。
9、
つぎの朝、リロイは痛む体をひきずりながら、茂みを出た。
パパよりも、ママよりも、
ケイティのおうちに帰りたかった。
すっかり汚れたリロイを見て、人は眉をひそめた。
前にリロイが野良犬を見て、そうしたように。
10、
「ママ、あれ、ポスターの犬だよ!」
とつぜんリロイを指さして叫んだのは、小さな子供。
リロイはびっくりして逃げ出した。
何を叫んだのか、よく分からなかったけど、とにかく逃げ出した。
角を曲がって、また曲がって、また曲がって、また曲がって……。
11、
最後に曲がっておどろいた。
壁という壁、電柱という電柱にびっしり貼られた、
リロイのポスター!
「きっと、ケイティが貼ったんだ!」
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
このポスターをたどっていけば、きっとケイティのところにつくはず!
12、
ポスターをたどりながら、リロイは全速力で走った。
痛む体もみじめな気持ちもどこへやら。
とにかく、ケイティに会うために!
13、
見慣れた景色にもどってくると、
嬉しくて嬉しくて、涙がこぼれそう。
いつもの道をふたつ曲がると、懐かしいおうちが見えた。
玄関にケイティが座って、悲しそうにしてる。
「ケイティ!」リロイは大きな声で吠える。
ケイティが目を上げて、リロイを見つける。
「リローーーーーーイ!」
リロイはケイティの腕に飛び込んで、
ケイティはリロイをぎゅっと抱きしめた。
14、
その夜、気持ちよさそうに眠るケイティの顔を見ながら、
リロイはそっとつぶやいた。
「パパもママもいなくていいよ。ケイティがいちばん大好きだもの」
すっかりきれいに洗ってもらった体を丸くして、
リロイは枕元で眠りについた。
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