女と文章

 女と文章は
 よく似ている。

 どちらも、
 中身のないやつほど
 どこかで見たようなものや
 どこかで聞いたような言葉で
 美しく飾りたがる。


やらしい格好

 すごく
 やらしい格好をした
 女がいた。

 ぴったりとした
 ミニスカート

 開いた
 胸元

 体も
 そうとう
 気合い入れて作っていた。

 俺が
 思わず
 目を奪われて見ていたら、
 それに気づいた彼女が
 いやそうな顔をした。

 どうも、
 納得行かない。


潰える

 昔は
 ジャガーに乗ってやろう
 と
 思っていたが、

 今じゃあ

 プーマも買えない。


浮気を疑う女

 男が
 浮気するんじゃないかと
 疑う女は、

 自分にも
 浮気癖がある女

 か、

 なぜ
 自分が浮気されるのかを
 知ってる女だ。


男の浮気、女の浮気

 女は

 男の浮気は性欲で
 女の浮気は恋愛だ

 と

 思ってる。

 俺は逆だと思う。


女を泣かせる

 そういえば
 俺は
 女を泣かせたことが
 ないなあ、
 と
 ふと思って、
 あれこれと
 昔の女のことを
 考えてみたら、

 けっこう泣かせてた。


バーの女

 バーで
 女が一人
 物憂げな様子で
 飲んでた。

 同じ酒を
 何杯も注文していた。
 けっこう
 強い酒だった。

 俺たちの間には、
 空っぽのスツールが
 一脚。
 つまり
 俺と
 彼女は
 隣同士だった。

 ふと目が合って、
 会釈を交わして
 なんとなく
 話をした。

 彼女は
 飲めば飲むほど
 饒舌になり、
 涙もろくなった。

 彼女が
 泣きながら言うには、
 子供を産まなかったことを
 後悔しているらしかった。

 そして
 何よりも情けないのは、
 後悔し始めたのが、
 子供を産むような
 年齢じゃなくなってからだ
 ということだ、
 と
 彼女は言った。

   「若い頃は
  子供も旦那も
  要らないから、
  一人で
  仕事をして
  逞しく生きて行くんだって
  思ってたのよ。
  そういう姿に
  憧れてたわ。
  でも、
  女って、
  子供を産むように
  出来てるのね。
  そして
  子供を育てるように
  出来てるのよ。
  そうしないと
  満たされないように
  出来てるんだわ」

 そして
 同じ酒をもう一杯注文して
 一気にグラスの半分ほどを飲んで
 続けた。

 「でも
  今のあたしが
  過去に
  タイム・スリップして、
  二十五のあたしに
  そんなこと言っても、
  きっと
  二十五のあたしは
  鼻で笑って、
  あたしのことを
  情けない
  と
  言うんだわ。
  目に浮かぶみたい」

 俺は
 なんとか
 慰めてやりたかったが、
 かける言葉が見つからなかった。
 悲しい話だが、
 俺には
 女のことは
 解らない。


生きる

 生きるのは
 まるで
 まっ暗な道を
 目を凝らしながら
 歩いて行くのに似ていて、
 いつだって
 一寸先が見えず、
 自分が
 どこに居るのかも判らず、
 向こうから
 誰が歩いて来るのかも見えず、
 そもそも
 これで合っているのかも
 判らない。

 奇妙なのは
 確かにまっ暗で
 何も見えないのに、
 あちこちから
 悲鳴だけは聞こえてくることと、
 悲鳴を上げている連中は
 往々にして、
 お互いに無関心であるということだ。


浮気

 彼女に
 ある日
 浮気を告白された。
 俺より
 その男がいいと
 彼女は言った。

 「じゃあ、
  それでいいじゃないか」
 と
 俺は言った。

 「それだけ?」
 彼女が言った。

 「だって
  そいつと
  付き合いたいんだろう?
  じゃあ
  付き合わないと
  しょうがないよ。

  どうせ
  引き留めても
  付き合うんだろうし、
  止めないよ」

 俺は
 それぞれのグラスに
 ビールを注ぐと、
 彼女の幸せに
 乾杯した。

 思い通りに
 悪者になんて
 させてたまるか。


段ボール

 たまたま
 冷蔵庫の裏を
 覗いたら、
 冷蔵庫と
 壁の間に、
 段ボールが挟んであった。

 どういう意味か
 判らないが、

 どうやら、
 割とマメな女が、
 この部屋に居たことが
 あったらしい。


パソコン

 新しい
 パソコンを
 買って
 二ヶ月。

 まだ
 一度も
 フリーズしない。

 どこか
 壊れてるんじゃないかと思う。


エンドレス

 その日

 彼女は
 自分の夢だと思う
 仕事を
 エンドレスでしていた。

 俺は
 自分の夢なんて
 何だか分からなくて
 エンドレスで
 酒を飲んでいた。


忘れられない女

「忘れられない
 女
 いる?」

セックスしたあと、
ふたりで
ごろごろしているときに、
彼女が
俺に
そう訊いた。

俺は
これまで出会った女は、
ほぼ
全員
忘れられないのだが、

言わずにおいた。


天気

 空が暗くて、
 空気が湿っぽくて、
 ときどき小雨がぱらつく
 こんな日は、

 なんだか
 無性に

 女に謝りたくなる。


昔の女

 彼女は
 いばってた。
 すごく
 いばってて、
 いつも
 俺を
 下に見ようとしてた。

 俺が何か言えば
 すぐに反論した。

 俺が何かしようとすれば
 いつだって
 俺のやり方を馬鹿にした。

 俺が泊まろうとする
 ホテルは
 彼女いわく絶対ださかった。

 俺が旅行しようとする
 国は、
 絶対につまらないと彼女は言った。

 とにかく、
 俺のことを
 一から十まで見下してた。

 だが、
 蛍光灯の交換も
 自分じゃできなかった。


真夜中

 真夜中に
 電話をかけてきて、
 まず

 「寝てた?」

 と
 質問するやつの
 神経が解らない。

 それどころか
 昨日は深夜の三時に

 「寝てる?」

 というメールに起こされた。


ラブストーリーはほどほどに

 映画や
 ドラマの
 ラブストーリーで
 きゃあきゃあ言うのが
 好きな女は
 いっぱいいるが、

 もし
 自分たちが
 ドラマと同じように
 男にされたら、

 きっと、
 気味悪がるだろう。


愛する/される

 愛するのにも
 されるのにも
 言葉や
 抱擁や
 セックス
 なんてものは
 必要ない。

 必要なのは、

 生きざまだ。


電車のおばさん

 電車の中で
 おばさんが
 携帯で電話してた。

 一応
 気を使ってか、
 口元を手で隠していたが、
 怒鳴ったりしてたから、
 あんまり
 意味がなかった。


待つ

 あるとき
 女の帰りを待っていたが、
 女は帰らず、
 俺はいつしか
 待っていたことすら忘れちまった。

 またあるときは
 別の女の連絡を待っていたが、
 女は連絡をよこさず、
 俺はいつしか
 待っていたことすら忘れちまった。

 またあるときは
 別の女が男と別れるのを待っていたが、
 女は別れず、
 俺はいつしか
 待っていたことすら忘れちまった。

 だが
 忘れちまったと思ってたのに、
 しっかりと
 その重みだけは
 胸の中に積み重なって
 溜まり、
 得体の知れない変な物になって、
 いつまで居座り続ける気か
 知らないが、

 酒の肴になっている。


深い海

 あんたは
 まるで
 深い海みたいな女だった。

 表面は
 波打ってても、
 底のほうは
 穏やかで
 薄暗くて、
 居心地がよかった。

 そして
 息苦しくなっても
 なかなか抜け出せない。


詩人と女

 女は
 詩人に恋して
 自分の物にしようとした。

 詩人は
 くたびれてたから
 女と暮らし始めた。

 女は
 初めのうち、
 詩人が書く詩を読みながら
 「ああ、
  この才能と
  あたしが
  一緒に居るんだわ」
 と、
 深く感動したが、
 毎日毎日、
 酒を飲み、
 夕方まで寝て、
 女と浮気する
 詩人の姿に、
 そのうち嫌気が差した。

 彼女は
 詩人の生活を変えようとした。

 清潔な服を着せようとして、
 三食ちゃんと食わせようとして、
 酒を控えさせ、
 遅くとも正午には起こし、
 女との浮気をやめるように言った。

 詩人はいつしか
 彼女を愛していたから、
 彼女の言いつけを守ったが、
 結果、
 詩が書けなくなり、
 捨てられた。


洗濯機

 あの女が
 出てった後、
 俺は
 ひとりで
 家事をやらなくちゃ
 いけなくなった。

 ゴミを出し、
 掃除機をかけ、
 ベーコンを焼いて
 食器を洗い、
 そして、
 洗濯機の使い方が判らず、
 彼女が恋しくなって
 泣いた。