バーの女
バーで
女が一人
物憂げな様子で
飲んでた。
同じ酒を
何杯も注文していた。
けっこう
強い酒だった。
俺たちの間には、
空っぽのスツールが
一脚。
つまり
俺と
彼女は
隣同士だった。
ふと目が合って、
会釈を交わして
なんとなく
話をした。
彼女は
飲めば飲むほど
饒舌になり、
涙もろくなった。
彼女が
泣きながら言うには、
子供を産まなかったことを
後悔しているらしかった。
そして
何よりも情けないのは、
後悔し始めたのが、
子供を産むような
年齢じゃなくなってからだ
ということだ、
と
彼女は言った。
「若い頃は
子供も旦那も
要らないから、
一人で
仕事をして
逞しく生きて行くんだって
思ってたのよ。
そういう姿に
憧れてたわ。
でも、
女って、
子供を産むように
出来てるのね。
そして
子供を育てるように
出来てるのよ。
そうしないと
満たされないように
出来てるんだわ」
そして
同じ酒をもう一杯注文して
一気にグラスの半分ほどを飲んで
続けた。
「でも
今のあたしが
過去に
タイム・スリップして、
二十五のあたしに
そんなこと言っても、
きっと
二十五のあたしは
鼻で笑って、
あたしのことを
情けない
と
言うんだわ。
目に浮かぶみたい」
俺は
なんとか
慰めてやりたかったが、
かける言葉が見つからなかった。
悲しい話だが、
俺には
女のことは
解らない。
|
|