男とセックス


 もしも
 あんたが女で、
 あんたの男が
 「俺は
  お前としか
  セックスしたくない」
 と
 頼んでもいない
 誓いを立てるような
 男なら、
 多分
 その男は
 とんだ糞野郎だ。

 いい男ってのは
 誰とでも
 やりたがってて、
 その中でも
 とりわけ
 あんたと
 やりたがってる。


セックスする女


 セックス
 したいときに
 セックス
 する女が
 何人か居るという生活に
 ガキのころ
 憧れた。

 今になって思えば、
 それは
 それで
 地獄みたいなもんだ。


新しいズボン


 新しいズボンを
 買った。

 このズボンは
 俺が持っているズボンの中で
 唯一、
 まだ、
 女に脱がされてない。





 街を歩きながら
 道行く人々を
 目で追っていた。

 俺は
 あの女とは
 やらないだろう。

 あの女とも
 やらないだろう。

 あの女とも
 やらないだろう。

 あの女とも
 やらないだろう。

 あの女とも
 やらないだろう。

 あの女とも
 やらないだろう。

 あの女とは
 できないだろう。


勝負下着


 前から
 どうしてもやりたかった
 女と、
 ついに俺は
 待ち合わせした。

 待ち合わせして、
 酒を飲んで、
 「さあこれから」
 という時に、
 彼女は
 用事があると言って、
 帰った。

 あれから
 俺は
 勝負下着をはいたまま。

 もう三日経った。


携帯電話


 携帯電話の
 メモリに
 どうしても思い出せない
 女の名前と
 電話番号がある。

 どのみち
 二度と使わないんだろうが、
 なんとなくもったいない。


人の気持ち


 「あんたは
  人の気持ちなんて
  解りゃしないのよ!」

 彼女は泣きながら、
 俺に向かって
 グラスの中のブランデーを浴びせた。

 彼女がそんなことをするのは、
 俺の気持ちが
 解らないからだ。


俺と女


 俺は女が好きだ。

 俺が男だと知ってて、
 それを責める
 女の気がしれない。


デート


 デートをして
 「つまらねぇな」
 と感じたら、
 相手もたいていの場合
 そう思っている。

 勝負は、
 どっちが先に、
 帰る理由を見つけるかだ。

 負けると
 とても惨め。


ケータイ・メール


 メールの量や
 返事の速さや
 文字数が
 気持ちの大きさだと
 勘違いしてる
 馬鹿女は、

 恋愛する前に、
 三日間くらい

 滝にでも打たれて来い。


喧嘩の原因


 俺と
 彼女は
 しょちゅう喧嘩をする。

 理由はどうあれ
 大抵の場合
 悪いのは彼女で、
 謝るのは俺だ。





 夜中から
 東京では雪が降り出した。

 暖房の効いた部屋で
 窓から
 外を見ながら、
 ふと
 昔別れた女が
 どこかで寒さに震えてないか
 気になって、

 俺は
 舌打ちをする。


女が出て行くとき


 女は
 出て行くとき、

 置いていって欲しいものを
 持ち去り、

 持っていって欲しいものは
 なにもかも
 置いて行く。


彼女の世界


 薄暗いバーで
 彼女は、
 自分がいかに
 世界を知っているか
 つらつらと
 俺に語ってみせた。

 彼女は確かに
 世界のことを
 なんでもかんでも
 よく知っていた。

 彼女が生きている
 世界のことだけは。

 だけど
 世界には
 彼女が生きているものの他に
 いくつもの世界があった。
 そして
 彼女は
 その
 いくつもの世界の存在を
 知らないばかりか、
 自分が知らないという事実を
 疑うことすらしなかった。

 だけどきっと
 心のどこかで
 不安を感じていたから、
 ああやって、
 自分の世界のことばかり話すんだろう
 と
 思いながら、
 俺は
 話を聞いていた。

 その夜
 俺と
 彼女は
 一緒に寝た。
 彼女は
 まっ暗いベッドの中で
 服を脱ぎ、
 脱いだ服を
 ベッド・サイドに
 適当に放り投げた。

 俺も
 服を脱いで
 俺たちは
 抱き合った。

 肌と肌が触れて
 背中に手を回しても
 彼女は
 自分が世界を知らないのに
 知ってるふりをしてるって
 認めようとしなかった。

 俺は なんだか
 彼女がかわいそうになって、
 なにもせず
 そのまま眠った。

 彼女はきっと
 俺と寝れば
 俺の世界が手に入ると思ってた。
 だけど
 そんなものはまやかしだとも、
 彼女は知ってた。
 だから
 そんなことは
 どうしても
 できなかった。

 彼女は
 自分でも知らないうちに、
 そうやって、
 狭い世界を生きていくことを
 選んでいた。

 そして
 俺は
 それに耐えられなくなって、
 三度目に会った日からは、
 部屋に上げなくなった。


靴下


 部屋を片付けてたら
 ずっと昔に別れた女の
 靴下が
 片方だけ出てきた。

 匂いをかいでみたが
 もう
 俺の部屋の匂いしか
 しなかった。


自転車


 彼女と付き合って
 今でも憶えてるほど
 つらかったのは、

 彼女の
 暴力と、

 彼女が
 昔の男を忘れられないことと、

 彼女が 出て行ったあと、
 残された
 彼女の
 自転車を売って、
 町から
 とぼとぼ歩いて帰ったことだ。


別れた女に捧げるブルース


 お前と別れて
 半年。
 俺がまだ
 他の女を
 部屋に上げないのは、
 誰も、
 来たがらなかったからじゃない。

 そのとき
 ひとりで居るお前を思うと、
 とてもじゃないけど
 上げられないからさ。


女の気持ち


 「あなたは
  女の気持ちなんて
  分からないのよ!」
 と、
 彼女は
 俺を責めた。
 でも、
 俺は男なんだから、
 分からなくて当たり前だ。


昔の女


 昨日、
 久しぶりに
 昔の女に会った。

 俺はまだ
 彼女に惚れてて、
 彼女もまだ
 俺を好きだった。

 俺は前日徹夜して、
 眠いはずだったが、
 それでも、
 朝方まで話し込んだ。

 色々なことを
 話した。
 彼女の生活のこと、
 彼女の友人のこと、
 彼女の仕事のこと、
 彼女の目標のこと、
 土曜日のパーティのこと、
 最近読んだお気に入りの本のこと、
 俺の仕事のこと、
 俺の目標のこと、
 俺の兄弟のこと、
 とにかく、
 色々なことを
 話した。

 相変わらず
 俺と彼女は、
 すごくしっくり来た。
 これまでの
 どんな女よりも、
 彼女は
 俺にとって
 いい女だと思えた。

 でも
 俺たちの間には、
 もう
 付き合えないだけの
 理由があるのを、
 俺たちは
 ふたりとも知ってた。

 きっと俺は、
 いつか
 彼女が他の男と一緒になったのを
 知って、
 苦しむことになるだろう。

 俺は
 今日一日考えて、
 新しい女を
 作ることにした。

 問題は
 相手がいないってことだ。


ろくでなし


 昔
 付き合ってた女は、
 なにかあると、
 すぐに
 俺が浮気してるんじゃないか
 と、
 疑った。

 よほど
 俺のことを、
 ろくでなしに仕立て上げたかったんだろう。


エクスタシー


 俺とセックスして
 初めてイくことを憶えた
 という女が
 三人いる。

 つまり
 俺は
 少なくとも三回
 嘘をつかれている。


発言


 女は言った。
 「ずっとあなたが好き」
 「ずっと傍に居たい」

 そういうことを言うから、
 後で
 どちらも
 がっかりする。



コーヒー・カップ


 彼女の家でコーヒーを入れると、
 いつもカップには油が浮いていた。

 あまり、
 洗い物が好きじゃない
 女だった。

 俺はいつも
 彼女の家に行くと
 流し台に溜まった
 食器をあらって、
 洗濯機に入ったままの
 洗濯済みの洋服を
 もう一回洗って
 干した。

 彼女の家でコーヒーを入れると、
 いつもカップには油が浮いていた。
 だけど
 八月十四日、
 彼女の家でコーヒーを入れたのに、
 カップには 油が浮いてなかった。

 八月十四日の彼女は いやに神経質で、
 いつになく
 イライラしてた。
 イライラしながら、
 何度も
 発作的に
 俺を
 抱きしめたり
 俺の
 手を握ったりした。

 八月十四日、
 彼女は俺の部屋の
 キーを返し、
 俺にも
 彼女の部屋の
 キーを返すように
 言った。

 俺は
 最後にもう一度
 彼女とセックスがしたい
 と言った。
 彼女は
 シャツの前を合わせるようにして
 だめだ
 と言った。

 俺は
 彼女に
 新しい男ができたんだと、
 直感した。
 カップを洗ったのは、
 そいつに違いない
 と。

 八月十四日。
 もうあれは六年も前で、
 俺は今でも、
 彼女を思い出して、
 カップを洗わないで
 三日間使うことがある。


小説家


 彼女は小説を書いている。
 部屋には
 彼女の指が
 キーボードを叩く音が
 響いていて、
 その向こうから
 冷蔵庫が
 唸る音が聞こえている。

 俺は
 ベッドに寝転んで
 小説を読んでいる。

 彼女がなにを書いてるか
 興味があったのは、
 彼女とセックスする前のこと。
 きっとはじめから
 俺は
 セックスがしたかったんだと思う。

 彼女がもしも
 銀行員だったら、
 俺は
 銀行の業務に
 興味を持っただろう。

 彼女がもしも
 ガソリン・スタンドの店員だったら、
 俺は
 ハイオクとレギュラーの違いに
 興味を持っただろう。

 彼女がもしも
 レストランのウェイトレスだったら、
 俺は
 彼女の私生活に
 興味を持っただろう。

 彼女がもしも
 サッカー選手だったら、
 俺は
 彼女のチームに
 興味を持っただろう。

 だが、
 すぐに俺はそういうことへの
 興味をなくし、
 こうやって
 今みたいに
 本当に興味があったのは
 セックスだったと
 自覚するのかもしれない。

 そして
 やはり今みたいに
 一年も一緒に暮らせば、
 彼女とのセックスにすらも飽き、
 初めは
 素晴らしい音楽にすら聴こえた
 キーボードを叩く音も、
 ただ 鬱陶しく
 うるさく
 聴こえるように
 なるんだろう。