十一月七日(火)
明日『Good Luck』『Letters to Me』を書いたアレックス・ロビラ氏の新作『7 Powers』が発売されます。流れ的には『Good Luck』の亜伝というか、ストーリーがつながっていて、面白いです。内容も前回同様、啓発的な内容ながらもストーリーがしっかりしており楽しめます。1,000円とリーズナブルなお値打ち価格。翻訳も担当させていただきました。ぜひどうぞ!
一冊翻訳し終えて、すぐに次の一冊に取りかかる。それと平行して長編を一本やりながら、自分の作品も一本書き始めた。ときどきスヌーカーの練習に行く以外はほとんどデスクの前から動かずに生活していると、まあ、当たり前の話だが、孤独だなあと思う。バイトや会社などで仕事を終えると「おつかれー」とか、ボタンを押せば機械が喋るみたいに定型句のねぎらい文句をかけてもらえて、あの心のこもっていない挨拶はどうしたものかと常々思ってきたが、今にして思えば、あれで救われる部分も大きいのだな。
本格的に文筆業に従事しはじめてから丸三年以上にもなり、その間本当に原稿をやりっぱなしだった。もちろんやりがいがあるし刺激的なのは間違いないのだけど、一方で、ものすごくくたびれて、どうしようもない部分が出て来てしまっているのを最近感じている。特に翻訳というのは特殊な仕事だとつくづく思う。大学院で「翻訳者は作家の奴隷だ」と言われたのを、しょっちゅう思い出す。一ヶ月なら一ヶ月。三ヶ月なら三ヶ月。作品を任されている間、自分のことにはほとんどなにも没頭はできない。それをやっている間に、さらにいい訳にできるのではないか。その思いがどうしてもぬぐえず、いつも作品のことばかり考えてしまう。大事な作品を、見ず知らずの、人となりも分からない外国人の手にゆだねる作者の気持ちはいったいどんなだろうかと思うと「いやあ、俺なんかで本当に申し訳ない」という気持ちになってしまうのだ。
「翻訳は、一般の読者から『訳が駄目だ』と言われてもいけないし、逆に『訳がいい』と褒められてもいけない。褒められるというのは、訳者が前に出すぎている証拠だ。訳者が完全に無視されたときに初めて安堵しなさい」
ある人からそう教わった。確かにその通り。このあたりが翻訳のいちばん難しいところでもあり、おもしろさでもあると思う一方、やはり訳者とは孤独な仕事なのだろうなと思い「うへえ」という気持ち。「それでも自分の仕事を誰かに褒めてもらいたい」という下心をふと感じたときに、たまらない自己嫌悪に陥り、机の上に広げてある原書に向かって「ごめんなさい」と僕は謝る。
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