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 十一月二十九日(水)
 朝倉さんの奥さんで、僕ともよきお友達であるカヨコさんがお店を出された。ウェブベースの雑貨通信販売店だ。第一弾は、本物素材を使用したミニツリー&リースだとか。下記から注文できるようなので、ぜひどうぞ。かわいらしいです。こんなかわいらしいものが自宅にあるクリスマスなどなかったので、僕も今年は購入して、クリスマスをエンジョイしてみるつもり。
 ちなみに、ひとつひとつ完全手作りなのだそう。誰かが気持ちをこめて作った手作りのものが部屋に飾ってあるクリスマスなんてちょっと素敵かも。

『magenta』
 
 


 十一月二十八日(火)
 今年の頭に亡くなった東海地方のスヌーカー選手、都築君のことが思い出されて仕方がなかった。彼のことはたびたび思い出し、去年の九月から更新されなくなってしまったブログを読み返してみたり、試合で会ったときのことを思い出してみたりしていた。彼に会えたのはほんの数度、試合のときだけだったが、彼のことが好きだった。
「自分の好きなスヌーカーという競技を、ひとりでも多くの人に知って、楽しんでもらいたい」
 その純粋な気持ちがとても強い男で、仕事の合間に全国各地を飛び回っては、スヌーカーのあるところならば彼はどこにでも行き、実際に球を撞き、レポートを書いてウェブに載せ続けた。あちらこちらのブログやウェブサイトをチェックし、誰かスヌーカーに興味がある人がいれば、自ら連絡を取り、スヌーカーを教えていた。試合に勝てば、相手に「どうやったらもっといいプレイができるか」を独特の節回しで切々と説き、時には敗者の感情を逆撫でしたりする一面もあった。審判では、彼がいちばん声を張り上げ、遠くで見ている人にもちゃんと分かるように、堂々とジャッジングをしていた。今でも彼の名前で検索をかけると、彼を惜しむ声や、彼に感謝する声があちらこちらで引っかかる。

 彼が亡くなってからスヌーカーの台はまだ増え続けている。生前の彼は、全国にある個人所有以外のスヌーカーテーブルをすべて撞いたことのある唯一の人間だったが、彼が撞いたことのない台が増え続けている。なんとなく寂しい一方で、これも彼が続けてきた活動が実を結んでいるひとつの形なのかな、などとも思う。
 本当に立派な方だったな。ゆっくり話がしたいなと思いつつ、試合を終えるといつも慌ただしく帰ってゆく彼と食事を共にできたのも、たった一度きりだった。今シーズンが進み、昨年度のポイントが消えていき、都築君は僕らの協会のランキングから姿を消してしまった。ついに名前が消えてしまったときのあの寂しさは、忘れられない。今の仕事が一段落ついたら、お墓参りに行こうと思う。


 十一月二十七日(月)
 全勝優勝を飾った横綱朝青龍が小結稀勢の里を蹴手繰り(けたぐり)という技で勝ったことが、波紋を呼んでいるらしい。協会から部屋の親方に注意が行き、親方から横綱に注意が行くという流れになるらしい。ざっくばらんにまとめると「横綱たるもの、そんなこざかしい技を使わずに、ドカンと勝負せんか」というところらしいのだが、相撲って本当に独特だなあと思う。ルールで認めている技を使って怒られるのだから、難しい。野球などで、主砲を敬遠してブーイングをもらうのともちょっと違う。
 個人的には、朝青龍みたいなドカンと一発かましてくれるパワフルな力士が、そういう頭脳プレイやちょっとした小技を出したりするのは、面白いし、それはそれで楽しいからむしろやってほしい気持ちもある。

 それに比べ、スヌーカーってホントになんでもアリだな。入れられる球がないときなど、手球をちょこんと撞いて、ゴチャゴチャとボールが集まっているところに埋めてしまうショットとか、やってる方も「こりゃあいくらなんでもセコいだろ」と思ってはいるものの、かのジミー・ホワイトいわく「ルールで許されてるんだからやるべきだ」とのこと。んで、試合などで実際にそれをされるとものすごく困ることも多いわけで。「スヌーカーには、そうとしかできないときはセコく。その代わり、攻めると決めたら堂々と攻める」というメリハリがあるなと個人的には感じていて、そこら辺がとても好きな部分でもある。

 そうそう。くどいようですが、アダム・カップ、ぜひぜひ参戦いらしてください。駅から歩いて行ける場所でスヌーカーの試合が見られるチャンスは、年に一度だけ(たぶん)!


 十一月二十六日(日)
 アダム・カップ予選。辛くも通過。最近の好調さから見て、ちゃんと撞けば誰が相手でも大丈夫だろうと思っていたのだけれど、初っぱなから四連続でファールをしてしまい、それでなんだかおかしくなり、あとはもう、まったく球入らず。非常識的に穴の狭い1番テーブルだったっていうのも大きいとは思うけど。とにかくすっかりぶっ壊れてしまい、普段入っているところを狙っても、ぜんぜん違うところにはずれるようになってしまった。修正しても、修正しても、修正してもダメ。よくあの状態で通過することができた。今回は、単なるラッキー通過だ。

 ともあれ、通過は通過。決勝は、今度の日曜日、12月3日に、新宿歌舞伎町、コマ劇場横にある『サムタイム』というビリヤード場で開催されます。「HUMAX」と書いてある、一回がゲーセンになっているビルの5Fです。朝十時からだいたい六時か七時くらいまで試合は続いていると思うので、ぜひとも観戦にいらしてくださいませ。観戦無料。


 十一月二十四日(金)
 朝までかかって仕事を一本終わらせる。今月は、あと三本。先が見えてきた! 今日は、あと二本終わらせてしまうつもり。来月からは、ちょっと大変な仕事に一本取りかかる。もうひとがんばりすれば、精神的にもいろいろと解放されるはず。がんばるぞ。いろいろ片付いたら、今度こそ生活をもっとちゃんとするように努める予定。今は、食事や睡眠をあれこれ言っていられるような状況ではないので、未来の自分に謝りながら、その辺は適当にやらせてもらう。

 それにしても、最近ちょっと寒い。ついこないだまで暑かったと思ったら、みるみるウチにどんどん寒くなってきてしまった。やだな、これから長く寒い冬だ。


 十一月十八日(土)
 ぎえええ。もう十一月も半ば過ぎてるな!! 今日は夕方の六時に起きてから仕事。午後四時に目覚ましかけてたのに、起きられなかった……。で、深夜三時、ようやく終わる。「なにもないことを確かめるためのチェック」的な仕事だった。まあ、見直し。たとえば「おー、50ページも進んだじゃん」みたいな仕事であれば、やり終えた後に充実感があるのだが、この手の仕事にはそれがないからなんとなく疲れる。でも今日はユンケル2本飲んでるので、眠くなるまでまた次の仕事をがんばるぞ。

 一月に、タイのスヌーカー選手権に参戦できるかもしれません。まだ確定ではないのですが、福田豊選手をはじめ、数人で遠征に行こうという企画があるのです。一月もけっこう忙しそうだけど、なんとしても時間を作りたい。また選手としてひとつ成長するチャンスだ。

 今月の26日にScriptのライブに行こうと思っているのだけど、よくよく考えてみたら、アダムカップの予選と日程がかぶっていた。どちらに行くべきか……。


 十一月十七日(金)


 シンガポールからアレックスが来ているというので、新宿サムタイムに行ってきた。アレックスは二年前に僕がスヌーカーを始めたばかりのころに知り合ったプレイヤーで、なんと、シンガポール代表。最近143ブレイクを出したらしい。すごい人。とにかく入れる。今日は7-3くらい。アレックスはハウスキューだったし、あんま参考にならんけど。でも、けっこう入れた。アダム・カップ前に、ちょっとだけ好感触。

 つーか、Amazonで見つけたんだが、このmp3プレイヤー安くない? いつの間にか、こんなに価格破壊は進んでいたのか……。


 十一月十六日(木)
 ある日いきなり「今まで黙っていたが、お前は王家の血を引く伝説の勇者なのだ」なんて言われたらどんな気持ちかなー、と考えてみたけど、まったく有意義ではないのですぐやめて、カリカリ仕事。スピードがどうしても上がらず苦しい。うんうんうなってるうちに、いつの間にかもう朝の六時半ではないか。今日はこのまま早めに寝て、また明日がんばろう。


 十一月十四日(火)
 昨日サムタイムでひとり練習中に、いきなりセンチュリー出た。104。対戦でのブレイクではないからノー・プレッシャーだったのだけど、それにしてもすごかった。どうやって撞いても撞きさえすれば入るみたいな感じで、最後は油断しすぎてはずした。相変わらずの練習キングっぷり。次回練習時にも、保ててたらいいなあ。明日にでもちょこっとだけ行って、試してみてこよう。人によってセンチュリーへの道はさまざまだと思うけど、俺の場合は間違いなくグリップ。「うわあ、これだよ。こういうふうにキューを握りたかったんだよ!」という、超理想のグリップで初めてキューをにぎることができていた。もう一度できるかなあ……。

 それにしても唇の内側に出来た口内炎、いつになったら消えてくれることやら……。


 十一月九日(木)
 このニュース。練馬区で飲食店を経営している男性(73)が、店でピアニストに日本音楽著作権協会(JASRAC)に無断で外国音楽を演奏させたとして、なんと逮捕されたという。ちょっとどうかと思う。著作権を管理するのはけっこうだが、これは行き過ぎなんじゃないか? 在宅起訴なのかと思ったら逮捕だもんな。
 調べてみたら、下記のような規定があるのだという。

 生演奏25曲での日額       90円25曲=    2,250円
 生演奏25曲での月額    2,250円30日=   67,500円
 年間合計      月額 67,500円12月=  810,000円
 10年間の請求金額 年額810,000円10年=8,100,000円

 そして、過去10年まったく請求を行わなかったにもかかわらず、その10年分をいきなり請求され、立ちゆかなくなってしまったケースもあるのだとか。個人でライブのできる店を経営している人には他人事ではない。オリジナル曲しか演奏していない場合でも、それを証明できない限りは徴収の対象になり得るというのだから、ひどい話だ。もちろん、生演奏に限らず、CDなどを流している場合も同様に上記のような規定が設けられており、徴収の対象となりえるのだということ。要約すると、どんな店であろうとそこに音楽がある限り徴収される可能性があるということでしょ、これ。すごいな。
 ネットを使って無料で音楽をやりとりしたりするのはどうかと思うが、店で音楽流すことまで規制されてはたまったものではない。僕は、今回逮捕された男性を応援したい。

 上記の件とは一切関係ないが、千葉県の新ロゴが発表されましたね。なんの冗談かと思ったけど、本当にこれでした。


 十一月八日(水)
 新宿のポプラ社にて、『Good Luck』『7 powers』の著者、アレックス・ロビラ氏と会食。関係者が一堂に会して、天丼としじみ汁を食す。美味。しかし、どうも仕事上のミーティングというのはいつまで経っても不慣れなものだ、部屋に入った瞬間から動悸と吐き気がひどくなり、もしかしたらそのまま死ぬんじゃないかと不安になった。どんどん苦手になる。なんか喋ろうにも金縛りにかかったみたいに口は開かないしで、せっかく招待していただいたのにと、非常に申し訳ない気持ちになる。
 会食が終わり、近所の喫茶店でコーヒーを飲んでしばらくくつろいでいたら、ようやく落ち着いてきた。

 夜は、中川五郎さんのライブということで、代官山の『晴れたら空に豆まいて』という長い名前のお店に行った。いいお店だったけど、あのくつろぎ空間で完全禁煙というのはひどいな。あと、食べ物が豆関係しかないのは、豆が好きではない僕には厳しかった。食べてみたけど。
 ライブはとてもよかった。五郎さんの他にも、鈴木亜紀ちゃん、るーずぱんてぃが登場。亜紀ちゃんの歌は、やっぱりいつ聴いてもいいなあ。五郎さんの『父の日』では、みんながしんみり聞いている中、僕だけ笑いがこらえきれなくなってしまった。最近発売されたニューアルバム『そしてぼくはひとりになる』を購入。亜紀ちゃんからは、写真・詩集『旅の空 鈴木亜紀のいろいろ』を購入。
 五郎さんと会うのは一年以上ぶりだったと思うが、ふたりでいくら考えても、最後にいつ会ったのか思い出せなかった。たぶん、フェロー・アカデミーで講義をしたときかな。自信ないけど。代官山から下北沢へと河岸を移し、名前は忘れたが雰囲気のよいバーで一杯。亜紀ちゃんがなんだか具合が悪そうだったので、早めに解散。僕はひとりで久々の RINNE 。竹田君とどうでもいい話ばかりしながら飲んでいたのだが、夜中の三時に睡魔に負けて帰宅。なぜか毎週観ている『ネギま!?』の本日放送分を観てから寝た。
 ずっと仕事orスヌーカーだったから、久しぶりに昔みたいな一日を送ってみたら新鮮に感じること。今後は、こういうのも増やしていかないといかんね。

 それにしても、ポプラ社のエレベーターすごい。



 十一月七日(火)
 明日『Good Luck』『Letters to Me』を書いたアレックス・ロビラ氏の新作『7 Powers』が発売されます。流れ的には『Good Luck』の亜伝というか、ストーリーがつながっていて、面白いです。内容も前回同様、啓発的な内容ながらもストーリーがしっかりしており楽しめます。1,000円とリーズナブルなお値打ち価格。翻訳も担当させていただきました。ぜひどうぞ!

 一冊翻訳し終えて、すぐに次の一冊に取りかかる。それと平行して長編を一本やりながら、自分の作品も一本書き始めた。ときどきスヌーカーの練習に行く以外はほとんどデスクの前から動かずに生活していると、まあ、当たり前の話だが、孤独だなあと思う。バイトや会社などで仕事を終えると「おつかれー」とか、ボタンを押せば機械が喋るみたいに定型句のねぎらい文句をかけてもらえて、あの心のこもっていない挨拶はどうしたものかと常々思ってきたが、今にして思えば、あれで救われる部分も大きいのだな。
 本格的に文筆業に従事しはじめてから丸三年以上にもなり、その間本当に原稿をやりっぱなしだった。もちろんやりがいがあるし刺激的なのは間違いないのだけど、一方で、ものすごくくたびれて、どうしようもない部分が出て来てしまっているのを最近感じている。特に翻訳というのは特殊な仕事だとつくづく思う。大学院で「翻訳者は作家の奴隷だ」と言われたのを、しょっちゅう思い出す。一ヶ月なら一ヶ月。三ヶ月なら三ヶ月。作品を任されている間、自分のことにはほとんどなにも没頭はできない。それをやっている間に、さらにいい訳にできるのではないか。その思いがどうしてもぬぐえず、いつも作品のことばかり考えてしまう。大事な作品を、見ず知らずの、人となりも分からない外国人の手にゆだねる作者の気持ちはいったいどんなだろうかと思うと「いやあ、俺なんかで本当に申し訳ない」という気持ちになってしまうのだ。
「翻訳は、一般の読者から『訳が駄目だ』と言われてもいけないし、逆に『訳がいい』と褒められてもいけない。褒められるというのは、訳者が前に出すぎている証拠だ。訳者が完全に無視されたときに初めて安堵しなさい」
 ある人からそう教わった。確かにその通り。このあたりが翻訳のいちばん難しいところでもあり、おもしろさでもあると思う一方、やはり訳者とは孤独な仕事なのだろうなと思い「うへえ」という気持ち。「それでも自分の仕事を誰かに褒めてもらいたい」という下心をふと感じたときに、たまらない自己嫌悪に陥り、机の上に広げてある原書に向かって「ごめんなさい」と僕は謝る。


 十一月五日(日)
 プレミア・スヌーカーリーグ2006、スティーブン・ヘンドリー×グレアム・ドットを観戦。一年くらい前にドットのプレイを初めて見て「プレミアでこいつ見たいなあ。無理かなあ」と思っていたら、今年なんと世界チャンピオンの座を獲得し、すぐに実現。完璧に俺のおかげだな、間違いなく。でも選手としては不人気で、イギリスでも日本でも、スヌーカー関連の掲示板では叩かれまくりの感があるドット。顔に迫力がないからかな……。フォームもなんとなく頼りないし。スヌーカー界で一、二を争うくらい花がない選手であることは確実。世界チャンピオンになったというのにあれだけ地味なのだから、ある意味すごい。



 じっくりと一試合まるまるドットの試合を見たのは初めてだったけど、さすがワールド・チャンピオン。うまいな! たぶん、元々はすごくキューイングにクセがあったのだろうけど、それをねじ伏せながらのプレイはかなり親近感が湧く。ポット成功率がいまいちだったのは、プレミア初登場だったからまあ仕方がないとして、随所で見せてくれたあのポジショニングの正確さはすばらしい。たぶん身長もそんなに高いほうじゃないようで、非常に参考になるプレイがあちこちにあった。今後の放送がめちゃくちゃ楽しみ。今年はもう、ドット応援しちゃう。他にいないだろ。ちなみに、ドットはあんだけガリガリだけど、彼女はぽっちゃり。その対比もすげーほほえましくてよい。



 ところで、今年からプレミアに投入されている新テーブル。「Star」と側面にメーカー名が入っているけど、あれは中国の『星牌(シンパイ)』というメーカー。日本にはたぶん一台だけあって、僕も一回だけ撞いたことがあるが、そのときの印象は「めちゃくちゃ素直だけど、とにかく速い(つまり球がよく転がる)」という感じだった。放送を見ている限り、なんとなく似てるような!? ただまあ、そのメーカーだからそうなのかというのは謎。


 十一月四日(土)
 ものごとを正直に伝えるということは、とても怖いことだとつくづく思う。誰かに怒られそうだ。誰かに舌打ちされそうだ。誰かを嫌な気分にさせてしまいそうだ。僕が本当はどれだけ小さな人間であるかが人にばれてしまいそうだ。僕をとりかこむありとあらゆるものが僕を嫌悪しているのだという、長年僕に取り憑き続けている妄想が、本音を正直に形にした瞬間に現実のものとなって僕のゆく手にたちふさがりそうで、本当に怖い。連日、誰かに頭を下げて謝り続けている夢を見る。強い光に当たることが恐ろしい。
「それはちがう」と言われても、僕には僕の感じている以上のことはなにも分からず、それを分からぬことがまた申し訳なく、とても惨めな気持ちになる。疲れているのだな。