八月二十五日(土)
さてさて、そんなわけでさっそく第二回。「それいけ! 翻訳ちゃん!」と題してお届けしております。
で、翻訳をやる上でいちばんキモなのは「いかに原文を崩さないか」だと思います。文章の意味を崩すのもよくないけれど「原文の体裁を変えない」というもまた大事。
"Yes," She said. "I will."
「うん」彼女は言った。「そのつもり」
たとえば上記のセリフ。こういう書き方、英語だと非常に多い。というのは、日本語と違って人称代名詞が少ないせいで「I」だけだと「あたし」なのか「俺」なのか分からず、読者が混乱してしまうからだ。そんな理由で存在しているこの形、外国文学っぽいテイストをただよわせる意味では、けっこう重要だ。これを
「うん、そのつもり」
だとか
「うん、そのつもり」彼女は言った。
みたいに、セリフをひとまとめにして訳してしまう人が非常に多いが、個人的に、原則としてこれはナシ。そのセリフの体裁をもひっくるめて作品である以上、訳者が勝手にいじってはダメだと思っている。昨日も書いたけれど、翻訳者は著者の奴隷。原文の体裁どおりに翻訳した上で、あとは編集者の判断に委ねるというのが正しいと思う。ただし「原則として」っていうのは、例外もあるということ。今やっている『レインボーマジック』のように子供向けの本の場合は、本人たちがわざわざ「やっぱイギリス文学よね」などと選んでいるわけではないので、そんなに外国文学っぽさを残さなくてもいいと思う。
とはいえ、こういうセリフの形態に対してアレルギー反応を示してしまう読者が多いのもまた事実で、「あれが鬱陶しくて読みづらい」という意見も多い。でも、あれよ。古くから日本人て外国文学の翻訳版に対してそういうアレルギーを持っていたのだけど、ずいぶん解消されてきているのだ。かつては「外国人の名前のままではちょっと……」みたいな意識も強く、有名どころではあの『フランダースの犬』なんて、登場人物の名前まで日本人になってしまったのだ。ネロが「きよし」、パトラッシュは「ぶち」だ。もしかしたら他にもなんか理由があったのかもしれないけど、たぶんその辺の理由が強いんじゃないかな。フランダース地方に清もブチもいないと思うのだが。
と、話がそれた。上記みたいなのが、原文の体裁に関するお話。これについては、まあ非常に簡単だ。要するに「原文のまんまの形で翻訳しちまおう」というだけの話である。あんまり長くなってもアレなので、今日はここまで。明日は「意味の抽出」についてのお話。
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