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 五月三十一日(土)
 五月いっぱいかかっていた原稿にようやく片が付いたと堀江さんから連絡。もう一本取りかかっていた原稿も無事に送って「よし、明日という明日はのんびりしてやるぞ」と、目覚ましをかけず、おかしな睡眠法も取らず、朝方六時過ぎに布団に潜り込んだまではよかったが、なんだか胸が高鳴ってしまい目が覚めてみればまだ朝の九時ではないか。眠ろうとしても、指先にキーボードの感触がないのがどうにもおちつかず、布団の中で骨盤のあたりをタイピングしつつ思ったことのあれやこれやを脳内のディスプレイ上で原稿にしていったらどうにもこうにも止まらなくなり、結局そのまま起床(俺のシャドウ・タイピングは、脳内でも誤変換やミスタイプがリアルに再現できるほど再現性が高い。変換の優先順位などもかなり細かく再現されるため、変換キーを押しすぎたのでまた変換しなおしたりというところまでやるのである)。とりあえず作業が一段落しているはずだというのにパソコンの電源が切れた状態ではどうにも落ち着かず、パソコンを起動し白紙の原稿を表示させ、煙草に火を点けてみたところでようやくいくらか平静を取りもどす。
 いやいや、だめだめだめ。今日は一日ほんとに俺休むから。うわごとのように何度も口に出してつぶやいてみるのだが、どこからか声が聞こえてくる。
「アホかお前。休みとか言ってる暇があったら原稿でも見直しとけ」
「休みなんて取っていい身分だと思ってんのかこのトンチキが」
「悠長なこと言ってねぇでキリキリ働けウスラトンカチ」
「まだ余力あるんだろ? だったら自分のことなんて考えてんじゃねぇよクソったれが」
 などなど、どこの誰かは知らぬが周囲を取り囲んで俺を急き立ててくるのである。ここしばらく頭の中で水を汲み上げ続けていた水車は、空っぽのまますごい勢いで回転を続けているような有様で、大変気持ち悪くて朝から何度かトイレに駆け込んで吐いた。どこへ行くのも自由のはずが、何かに申し訳ないような、誰かに見張られているような気がして机の前から一歩も動けず、かといって何もしないままかれこれ六時間余が過ぎた。まったく自分の馬鹿さ加減、不器用さ加減にはほとほと恐れ入る。業務連絡が入ってこないのがあまりに気持ち悪く、30秒に一回くらいメールの送受信ボタンを押したり「もしかしてサーバがトラブル起こしてるのかしら」と、他のメールアカウントから自分のメールアカウント宛にメールを送って無事に受信できることを確認してみたりと、なにこの完全にアホとしか言いようのない独り相撲は。

 こんなアレでは明日の予選とか絶対に無理なので、今日は早めに酒を飲んで寝てしまう予定。何が止まらないんだかよく分からんが、何かが止まらない。ムキーーー!


 五月三十日(金)
 兄のマリオさんのイベントが、六月十三日より有楽町のGallery Bar Kajimaにて開催される。六月九日から二十八日までで、日曜はお休み。下記のミュージシャンによるライブ・パフォーマンスなどもアリ。

13(金)8pm 堀田義樹(iMAGINATIONS)/ Charge 1,500円
14(土)7pm 石田幾太郎 / Charge 1,500円
19(木)8pm AND SUN SUI CHIE(明川哲也 aka ドリアン助川+MITSU) / Charge 2,000円
21(土)7pm 佐々木彩子(aka ちゃん)+増岡裕之 / Charge 1,500円
28(土)8pm tico moon / Charge 1,500円

 詳細は、mario-mandalaにて。


 五月二十七日(火)
 あの作家はつまらん作家だったなと
  ようやく言える 君と別れて


 五月二十五日(日)
 とりあえず、自分はただのスケベではないぞということだけは、ちゃんと言っておきたい。


 五月二十三日(月)
 今日は大々的に部屋の片付けを敢行。仕事が立て込んでいる間に、ちょっとさすがに限界を突破した。人が住めるってレベルじゃーねぞ! 人を頼んで手伝ってもらいながら、とにかくガンガン捨てまくる。気持ちいい! 大学院時代のノートや資料など、今までなんとなく思い出だと思って取ってあったのだけど、やっぱ不要だよね、ということで全部捨ててしまうことにした。写真も要らないかな。見ないし。とにもかくにも捨てないと。本も「これはもう読まないだろうなあ」という本はとにかく処分。三つある本棚のうち、ひとつが空っぽになった。この本棚も、もう崩壊が始まっているので処分する。重みのせいで一段一段がたわんでしまい、縦板が湾曲し始めている。大海嘯の前触れか。思えば、帰国して初めて買った本棚だ。七年も使えば、もう元は取ったな。5000円くらいだったし。

 手伝いに来てくれた女子に、夕食を作ってもらう。「思えば俺の人生、これまでこういうことしてもらったことがほとんどなかったな」と、感慨深く頂く。


 五月二十日(火)
 文筆業と切っても切り離せないのが、睡眠のテクニックである。今は、こんな文章を書いている場合ではないほど逼迫した締切寸前未訳原稿山積みシェケラー状態なのであるが、ちょっと他のことでもしないと一行たりとも進まないので、敢えて「これも仕事の為だ」と思い、俺が普段から使っている睡眠テクニックについて書いてみちゃう。

「うわ、睡眠てこういうアレか!」と最初にびっくりしたのは、大学卒業わりと直後にフリーライターとして出向したお台場の編集プロダクションでのこと。俺が行ったその夜、目を血走らせたライター同士が何やら険悪なムードになっていた。俺はいかんせん新参だし、知らんぷりを決め込んで延々ゲームをプレイしていたのであるが(ゲーム攻略本の仕事だったのな)、聞くともナシにその内容を聞いていたわけだ。
 言い争いの原因は、一枚の段ボールのようだった。怒っているライターいわく、せっかく自分が使っていた段ボールを取られたらしい。何に使っていたかというと、もちろん睡眠だ。
「お前いったいどうしてくれんだ」くらいの勢いで、ブチ切れとまでは行かなくても、半ギレぐらいのテンションで切れている。
 要約すると「二日目の段ボール」を他のライターがうっかり使ってしまったことが、いちばんの原因のようだ。彼いわく、一日目はどうもふわふわすぎていかん。二日目は、ちょうどいい具合に中の波状の部分が潰れて寝心地が抜群にいい。三日目になるとすっかり潰れすぎてしまい、固すぎていかん。ということだった。せっかく今日一日「二日目の段ボール」だけを心のよりどころにして頑張っていたというのに、ぱっと横を見れば、他のやつがその段ボールで寝ていたので、引きずり起こして喧嘩になったというわけだった。
 基本的に締切前というのは「寝るか書くか」という状態に陥ってしまいがちなので、それだけライターは睡眠を大事にする。そんな折りにせっかく育てた段ボールを取られたら、そりゃまあ怒る。たぶん締切のストレスのスケープゴートにしているだけなんだろうけど、言い分はまったくもって正しいと言わざるをえまい。
 ちなみに「人間オフィス椅子をふたつくっつけたら十分に睡眠スペースが確保できる」と俺が学んだのは、この編集プロダクションであった。

 今は自宅で仕事をしているものだから、幸いにも、睡眠を巡って誰かと争いになるようなことはないのだが、かといって、毎晩毎晩ちゃんと布団で寝ているかというと、そういうわけでもない。なぜかというと、布団で寝ると、眠りすぎてしまうからだ。「2時間しか睡眠に割いていい時間はないのに、うっかり6時間寝てしまった」は、けっこうシャレにならない。しかもそんな時はだいたい限界近くまでくたびれ果てているので、下手をすれば12時間以上眠ってしまいかねない。目覚まし時計など、三つ四つかけていても、止めた記憶すらないまま気づくと寝過ごしてしまっている。
「ならばどう睡眠を取るべきであろうか」と試行錯誤の末に思いついたのが、肉体的目覚ましシステムである。

 まずは『尿意利用式目覚まし』。これは簡単である。4、5時間で目を覚ましたい時にはこれに限るのだが、水をがんばって1リットルから1.5リットルほど飲み、ビールを一本さらに飲んでから眠りに就く。すると4、5時間でえもいわれぬ尿意に目が覚めるのである。もっと尿意を確実に計算したい場合は、水よりも緑茶などのほうがいい。気持ちよく布団で眠れるので、この技術は割と重宝する。

 次に、2、3時間眠りたい場合だが、これには『座椅子式目覚まし』を使う。割と過酷な睡眠なので、あまりお薦めはしない。やり方は簡単。座椅子の背もたれを枕代わりにし、わざと寝違えるような角度で首を固定して眠るだけだ。眠りに落ちる頃までは首は大丈夫なので、何のストレスもなく眠りに入ることができるのだが、2、3時間もすると、首が痛くて痛くてたまらなくなり目が覚めるのである。「仕事はしなくちゃいけないのだけど、ちょっと寝ないと集中力が戻らない。でも普通に寝ちゃうとノルマが間に合わないし、絶対八時間くらい寝ちゃう!」という時には、これに限る。パソコンの前から一歩も動かずに眠れるし、目覚めた後も体を起こせば仕事にとりかかれるので、非常に合理的な睡眠方法といえよう。ちなみにちょうどいい首の角度を見つけるまでには、それなりのリサーチが必要である。

 三つめは『エアコン式目覚まし』である。冬なら暖房を最大に、夏なら冷房を最大にしてかけて、リモコンを隣の部屋なり風呂場なりに置いてきて寝る。冬の場合は布団を余分に掛け、夏だったらば、眠っている間にうっかりかけてしまわぬよう、布団は押し入れなりにちゃんとしまって寝るのがコツだ。冬ならば暑くてたまらず目を覚まし、夏ならば寒さに凍えて目を覚ます。これも2時間くらいでだいたい起きられるのだが、下手をすると体調を崩しかねないので、あまり使うことはないし、地球環境を考えてもあまりよろしくない。

 最後に『可動アイマスク式目覚まし』。これは、ほんのちょっと眠りたい時に最適だ。電気を全開に明るく点け、目の上にジャージやトレーナーの袖をかぶせて眠りに就く(選ぶ気力がない場合、手近にある靴下やパンツでも可)。ちょっとでも動いたら袖が目の上からズリ落ち、こうこうと明るい電気が目に入ってきて目が覚める。俺はこれでてきめんに目が覚めるのだけど、普段から電気をつけて寝る人には効果はあるまい。

 まあラジカセなどで音楽が流れるようにしてもいいのだけど、目覚ましに音楽を使うと、だんだんその曲が嫌いになってきたりするので、俺は使わないことにしている。そもそもラジカセとかコンポとかがウチにはないしな。使用頻度が高いのは『エアコン式目覚まし』以外の三つのテクニックだ。いつか使うような機会があったら、ぜひとも試してみてほしい。

 それでは、ハヴァーグーッドスリーーープ!


 五月十九日(月)
 疲れているせいか、最近物忘れが激しい。

 先日「そうだ、コンタクト切れてたから買わなくちゃ」と、銀行に行ったついでにメガネ屋さんにゴー。予定通りコンタクトを買って帰り、ちょっと仕事をして眠ったのだけど、起きて財布を見てみたら、なんか他の領収書が入っている。「おや、おかしいな」と思いながら開いてみると、なんとコンタクトと一緒にメガネをひとつ買っているではないか。こりゃあ一体どういうわけだ! というわけで、今日新しいメガネが出来てくるので、これはこれで楽しみです。どんなメガネ買ったんだろう。


 五月十六日(金)
 以前、大阪府の橋下知事が涙の反論をしたとき、インタビューでどっかの市長か村長か町長が「あれが本物の涙だったとしたら、相当の役者ですね」と答えていたのだけど、本物の涙だったら役者じゃねーんじゃねーかなー。


 五月十四日(水)
 夜九時から作業を開始し、午前一時から三時まで仮眠を取り、その後はぶっ通しで十四日の午後一時まで仕事。JAWSでカレーを食べてビールを二杯飲み、帰宅してもう少しだけ仕事をしてから眠りに就いて午後十一時半に目を覚ますも二度寝してしまい、本日十五日の深夜より作業を再開。今日も朝とは言わず夕方までだってがんばr

 きぇぇええええ! また「ボーリング」と「ボウリング」間違えているやつがいやがる! 俺はこの間違いが本当に神経に触るんだ。「ボーリングしに行きませんか?^^」ってお前らどこかに温泉でも掘りに行くつもりかと、もう正座させて問い詰めたい。

 何が言いたいのかというと、20,000円のものと19,800円の物を比べた場合に後者がそんなにお買い得なのかしらなどと思いつつ、「イチキュッパッ!」の「パッ!」あたりで安い気がしちゃうなー、ということではありません。


 五月十三日(火)
 二、三時間眠って四、五時間働き、また二、三時間眠って四、五時間働くというサイクルでまったく部屋から出ずに生活していると、一日に二回も三回も寝起きを繰り返すことになるので、日付の感覚がまったくなくなり、一週間がえらく長く感じられてくる。もう三、四日経ったかと思ったら一日半しか経っていなかったり。朝の七時だと思ったら夜の七時だったり。他のことがなんもできない。ああ、全日本選手権終わったなこりゃあ……。
 十九日の締切まで残すところ一週間ジャスト。ギリギリ終わらない量ではないのだけど、その間にカブってしまっている原稿もあったりで、気分は暗い。まあ、やるしかない。やれば終わる。どんなにキツくてもやっていれば必ず終わる。これはここ四年で得たデカい教訓だ。もう一息。一週間後は、格別に美味いビールを飲んでいることだろう。しかしながら、十九日から二十三日までの間に、二百ページの未訳原稿がもう一本あるわけで……。まあ、そのことは今は考えないことにしよう。もうここまできたらヤケだ。

 食事の時間がバラバラになったことで、せっかく順調に減っていた体重が元に戻りつつある。月末に仕事が一段落したら、また改めて始めなくてはなるまい。


 五月十一日(日)
 英語で陰毛のことを「pubic hair」というのですが、これを長らく「public hair(公共の毛)」だと思っており「へえ、日本語でもズボンのチャックことを『社会の窓』なんて言うけど、ああいう部分って万国共通で公の物っていう言い回しがあるのかねえ」などと勘違いしておりましたことを、深くお詫びいたします。


 五月八日(木)
 昨日の夜七時に目を覚まして朝六時まで仕事をし、食事を兼ねてガルーダに行って九時まで少しだけ飲み、十時半に寝て、十一時半に起き、十二時から仕事の打ち合わせで外出。三時に帰宅してからちょっとだけ仕事をして午後五時からまた眠り、午後七時に目を覚ました。もう、いつから何日経ったのかとかまったく分からない。またワーカホリックだと坊さんに怒られそうだ。まあ、その通りだからしょうがない。ストレスのせいで、せっかく減った体重がめきめき戻ってきているから、ほんとまいっちゃう。どうせまた減るんだから、つくんじゃねぇ。

 にしても、こんだけ閉じ籠もって仕事ばっかしてると、日記に書くことがなくなっちゃうな。まあ、仕事が忙しくなくても、どうせスヌーカーしてるか酒飲んでるかなんだから、書くことなんてありゃあしないんだけどさ。でもなんかそれもあんまりだから「もしかしたら俺が普通だと思ってるだけで人にとったら面白いのかしらん」などと思ったりもするのだけど、やはり面白くないものは、何度考えてみてもまったく面白くないのだから難しい。

 もうちょっと楽しい生活を心がけることにする。


 五月四日(日)
 近所のコンビニで、たまーにコンビニ弁当を買うのだが、どうもそこの接客マニュアルが間違っているようで、店員はいつでもこう言う。
「温められますか?」
 しばらくは何も言わずにいたのだが、たまたまちょっとカリカリしてる日に、ついに「いや、温めるの俺じゃないから」と言ってしまった。

 すこし経ち、たぶん接客マニュアルがいじられたのかもしれないが、その台詞も変わった。俺が弁当を持って行ったら、店員が訊ねた。
「お温めになりますか?」

 俺は何も言わなかったが、しばらく経ったら「温めますか?」になっていた。よかった。